東日本大震災における農業復興技術について

宮城県の被災圃場
宮城県の被災圃場(2011年12月)
宮城県の被災圃場
宮城県の被災圃場(2011年12月)

まずもって、今回の大地震で被災されました皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

この原稿は農業技術の範囲において、今後の復興に向けてどのような可能性を持っているかを考えたものであることを、最初に明記しておきます。また、現場調査をしないでの意見であることも申し添えます。

最低限の必須作業を逃さずに

 今の時期は水田作業の開始、野菜類の作付、果樹は春作業の開始と、まさに今年の農業始動の季節というタイミングです。

 こうした中での思わぬ事態に、身内の安否確認や手伝い、救援はじめ地区での活動などに追われ、農作業の段取りは当然後回しになっていると思います。ただそんな中でもまず、これまでの経験を生かして最低限のマスト事項を書き出してみることが大切です。これが第一段階となります。

 次に、そろえられない資材、道具を書き出し、どのように調達するかを考えること。とくに種苗の手当ては急ぐことです。

 その上で、圃場の状況を見て、書き出した作業が必要な時期までにどこまで準備できるかの目算をします。

 これらをしていく上で、行政やJAは平等が建前なので、当てにはしないことです。そこで個人の人脈を最大限に活用するように考えます。農業関連企業(機械、肥料、農材、種苗など)の通信手段をフル活用するといいでしょう。とは言え、どこもすべてのニーズには対応できないはずなので、やはり頼れるのは自分自身ということになるはずです。

除去できない流入物はまとめる

 さて、土砂の流入などの被害を受けた畑と水田の対応についてです。

 土壌管理からすると、まず水田は深く水没した場所以外は、作業に危険な異物の取り除きが挙げられます。これについては、水田は被災程度が軽ければ境界確認も容易と思われるので、生活面の復興が進められる地域では可能でしょう。

 最大の問題となるのは、流入した土砂に重金属が含まれていることです。平時であれば土壌サンプルを取って分析にかけてみるわけですが、それはできない状況でしょう。そこで、可能であれば後で除去できるように対応します。

 つまり、流入した土砂を圃場から除去できない場合は、全体に拡げてしまうのではなく、一カ所にまとめておくべきです。そして、あとで問題が判明すれば、重機で回収するわけです。ブルドーザーで大半を集めて土の表面に残る程度なら、重金属の混じる程度は低く、後での問題も起こりにくいはずです。

 この流入物に重金属が混入していなければ、水田ではとくに問題は起こらないはずです。

 津波によって海水を被った圃場では塩害も心配かと思います。塩害はとくに作物の芽にダメージを与えますが、発芽前の圃場に塩分が含まれていても障害は少ないでしょう。

畑は乾燥を待つこと

 一方、畑でも作業上危険な異物除去がまず最初の作業となりますが、境界の確認も慎重に行わなければなりません。この際、貸し借りの関係が生まれるかもしれませんが、その際の境界は仮にでも杭を打っておくべきです。

 さて畑の場合は、流入した泥はしばらくは触らないで、乾燥する時期を待ちます。必ず乾燥するタイミングが訪れますから、そのときに耕運します。

 このタイミングに元肥が間に合わなかったら、元肥ゼロでスタートしましょう。追肥で間に合います。 果樹関係も、春肥えは見送っても大丈夫です。ただ、これは水田でも同じですが、施肥作業はきつくなります。

 また苗を作って移植するものについては、育苗専用培土が入手できないことも予想されます。その場合、自家配合土を作ることになりますが、とくに肥料分を間違えないようにします。また、定植圃場はあせって水分が多い時に耕すことは禁物です。

 以上が、まず考えられる重要ポイントとなります。いずれにしても、平常心を保ちにくい中での農作業となりますので、作業事故にはくれぐれも気を付けてください。

関祐二
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農業コンサルタント せき・ゆうじ 1953年静岡県生まれ。東京農業大学在学中に実践的な土壌学に触れる。75年に就農し、営農と他の農家との交流を続ける中、実際の農業現場に土壌・肥料の知識が不足していることを痛感。民間発で実践的な農業技術を伝えるため、84年から農業コンサルタントを始める。現在、国内と海外の農家、食品メーカー、資材メーカー等に技術指導を行い、世界中の土壌と栽培の現場に精通している。