耕し方のいろいろ

プラウ
田起こしによって、無機態窒素を引き出す

水田の耕し方はさまざま。田植えについて農家に話を聞くならば、植える苗のことだけでなく、もちろん水田そのものについても尋ねてみたいものです。

 一般には、田植えの前に、圃場を耕す作業、そして耕した土を平らにならす作業とが必要です。

 従来、多くの地域で行政や農協が奨励してきた方法は、ロータリという作業機で圃場の土を撹拌し、そこに水を張って、代掻き機という板状の作業機を引っ張って土を平らにならしてきました。

 しかし、この方法に異を唱える人もいます。まず、ロータリによる土の撹拌です。ロータリは、トラクタの後部に取り付けて引くように使う機械で、トラクタの進行方向に対して横方向に長い軸にたくさんの刃を取り付けたような形をしていて、この軸を回転させることで、刃が当たった土を砕きます。しかし、これは圃場表面の浅い部分の土を細かくするには好都合な機械ですが、深い部分の土には全く作用しません。

 ロータリを使い続け、しかも化学肥料などを使うばかりで植物の残さや堆肥などの有機物を圃場に入れずに長い年月が経つと、圃場はトラクタの重みと泥によって締め付けられるばかりで、どんどん硬くなります。硬くなると、水田の水が地下に抜けにくくなるというメリットはありますが(水が抜けやすい水田を「ザル田」などと呼び、通常嫌がられます)、イネが根を張りづらくなって生長が悪くなり、また倒れやすくもなります。

 これに対して、圃場を全く耕さない、「不耕起」という過激な方法を取る農家も表れています。前作の稲刈りの後、イネの株をそのまま圃場に残し、次回まで全く耕さず、代掻きもしないというやり方です。圃場に残ったイネの株は、次回までに朽ちて、その残さが堆肥のように働き、圃場を自然に軟らかくするというわけです。イネ科の植物は土壌中の病害虫の原因を抑える作用があるとも言われていますので、その効果も期待されているようです。

 不耕起栽培を実践する農家は、多くの場合、冬季湛水といって、冬場も水田に水を湛えておくこともします。水によって、雑草の種子を窒息させたり、残さの分解を早めたり、またカエルやメダカ、その他水棲の肉食動物を温存して殺虫剤の使用を抑えることも狙うのです。しかし、これは水利権という厳しく難しい問題が関わってきますので、すべての農家が簡単に取り組める方法ではありません。

  • プラウ
    プラウ
  • プラソイラ
    プラソイラ

 一方、プラウという作業機を使う人も増えてきました。プラウは、欧米式の鋤(スキ)で、湾曲した大きなナイフを土に差し込んで、圃場の深い部分の土を上に、表面の土を下にひっくり返していく道具です。これを使うと、深い部分にたまった有機質が圃場表面にさらされることで酸化し、それが肥料として効きやすくなります。その上、圃場表面にあった雑草の種子などが深いところに閉じこめられて窒息し、雑草が生えにくくなるという効果もあります。

 また、サブソイラという作業機で、ケーキにナイフを入れるように土壌を切り裂き、圃場表面にたまった水や、水に含まれる空気を圃場の下の方まで行き渡らせるということも行われます。これらによって、硬く締まった圃場の物理性を改善し、イネの根が張りやすくするのです。

 プラウを使うと、圃場を平らにならしにくくなる、水が地下に抜けてしまうと考えて、ロータリだけを使うという人も少なくなく、むしろそれが主流です。しかし、プラウの導入で肥料のコストが下がった、雑草を退治できたという農家も多いものです。それぞれの圃場の土質、地下構造の違いによって、効果や使用感に違いがあり、農家の考え方も異なってきます。

 また、近年はプラウとサブソイラ両方の利点を持つプラソイラという作業機も開発され、プラウは嫌いという農家にもユーザーを広げています。

圃場の中に浅い部分があったために雑草が生えた水田/福井県
圃場の中に浅い部分があったために雑草が生えた水田/福井県

 ところで、せっかくプラウやプラソイラなどで圃場が硬くなるのを防いでも、その後の代掻きで土を練ってしまい、結局また圃場を硬くしたり、水や空気の通りづらい圃場にしてしまうという心配をする農家もいます。子どもの頃、泥んこ遊びをした人なら、このことは分かると思います。水で練った土は、土の粒子同士の間に含まれていた空気が泥水によって追い出され、乾くととても硬くなります。

 ならば、いっそ代掻きなどやめてしまえばいいと考えるかも知れません。しかし、水田の表面が平らでないと、いろいろと困ったことが起きてきます。まず、水の行き渡り方に差が出ると、イネの生長にも差を生じます。そして、浅い部分では、雑草も生えやすくなり、そこはイネの生長もよくないため、イネに勝ってしまうのです。

 そこで注目されるようになったのが、レーザー光線を使ったシステムです。トラクタの後ろに太いコイル状の作業機を取り付け、これを回転させながら引いて土をならすのですが、この作業機には垂直に高く伸ばしたポールが付いていて、その先端にレーザー光線の受光装置を取り付けています。

  • 発光器からのレーザー光線を作業機が受けて作業を行う
    発光器からのレーザー光線を作業機が受けて作業を行う
  • レーザー均平システムの発光器
    レーザー均平システムの発光器

 作業をする際、圃場の片隅にレーザー光線を一定の高さで水平に発する装置を起き、トラクタに付けた作業機が、常にこのレーザー光線の高さを基準として、圃場に対して作用するようにします。もともと土木工事で発達したシステムですが、これを使うと広大な面積の圃場の表面に全く起伏や傾斜がない状態を作ることができます。それだけでなく、レーザー光線を傾ければ、例えば100m進む間に落差が上下5cmという微妙な傾斜を付け、圃場に入った水が入口から出口まで少しずつ流れるようにすることも可能です。

 この作業は圃場に水を入れる前に行うので、代掻きをして圃場の土を練り、田の表面全体を目止めをするように水や空気の流れを遮断してしまうことを避けることができます。

※このコラムは柴田書店のWebサイト「レストランニュース」(2009年3月31日をもって休止)で公開したものです。

齋藤訓之
About 齋藤訓之 289 Articles
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。「FoodScience」(日経BP社)では「食の損得感情」を連載。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ → ※齋藤訓之のブログ →