外食チェーンが用いるノウハウは、いずれ公開されることが前提となる。また、外部のノウハウを用いれば、当然それは他社でも採用される。日本の外食チェーンは構造的に模倣される宿命にある。
2012.02.06
アンクル・アウル コンサルティング主宰
奥井俊史
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各外食チェーン本部は、これら自社の財産とは限らない各モジュールを組み合わせ、アセンブルする組み立て産業に近い産業であることは、やはり第21回で詳しく述べた。
このような新業態の開発やコスト低減努力は延々と続けられている。
さて、ある外食チェーンが使おうとするモジュールは、そのチェーンが独占的に持っているノウハウやシステムの場合もあるが、多くの場合、これらは容易に公開されてしまう。とくに顧客接点段階で用いるノウハウは、一般市場にさらされることが前提だからなおのことである。そしてそのノウハウが独創的であればあるほど、それは短期間に模倣され、パクられることになる。
独自のノウハウと考えていたものが他で用いられるのは、パクられた場合だけではない。各モジュールを生産する企業は比較的寡占的な業種になっていることが多いため、自社以外の外食チェーンが同じノウハウやシステムを調達し、自社のチェーンに取りこむことは比較的に簡単である。
基礎技術や部品は汎用品に近い形で市場に存在している。この点は正に製造産業一般と非常に近い。したがって、ある企業が新業態を開発してヒットすると、比較的に短期間に、しかも成功事例のデータを用いて低コストで、他社が類似業態を開発することは珍しくない。新業態でなくとも、たとえばコスト・ダウンの新手法など部分的な技術も、短期間のうちに他社にパクられる。
しかも、後発側はさらに何らかの新機軸や新味を取り込むので、単に“パクられる”だけでなく、“パクられてオリジナル化される”と言うに相応しい競争が繰り返される。
これはある意味でモジュール化された生産方式を採る産業自体が持つ宿命であるが、産業の目的が、Planned Price Competition である外食産業ではとくに顕著な産業の癖である。
外食産業の各社は、それぞれに独特の緻密さや真面目さを持っている。いわば、私が繰り返し推奨している“凡事の非凡な徹底”を行う土壌がある。ただ、その努力の矛先を、価格ではなく、人的な要素の徹底排除ではなく、別な価値を目指す方向へ向けることができれば、従来の外食産業の競争形態からは脱却して、それぞれの顧客との新しい関係作りができるのではないだろうか。
現状の競争形態では、外食産業の市場規模は今後もさらに縮小して行くに違いない。そのことは他の多くの製造業で既に見られた現象である。
1942年大阪府生まれ。65年大阪外国語大学中国語科卒業。同年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。中国、中近東、アフリカ諸国への輸出に携わる。80年初代北京事務所所長。90年ハーレーダビッドソンジャパン入社。91年~2008年同社社長。2009年アンクルアウルコンサルティングを立ち上げ、経営実績と経験を生かしたコンサルティング活動を展開中。著書に「アメリカ車はなぜ日本で売れないのか」(光文社)、「巨象に勝ったハーレーダビッドソンジャパンの信念」
(丸善)、「ハーレーダビッドソン ジャパン実践営業革新」
、「日本発ハーレダビッドソンがめざした顧客との『絆』づくり」
(ともにファーストプレス)などがある。
●アンクル・アウル コンサルティング
http://uncle-owl.jp/